私の父の叔父(私の祖父の弟)が横浜に住んでいる。父方の祖父の兄弟ではこの叔父だけが今も元気にしている。
実に多彩な人で絵画、書、造園と趣味がどれだけあるのか数え切れない。年齢は84才だが、精神的な若さには20代と自負するほどの方で、そのバイタリティたるや私など既に到底届きそうもない。
今は肉体的な老いのため遠のいているようだが、叔父は釣りの名手でもあった(釣り仲間に梅宮辰夫なども居る)。ものすごい大きさの魚を釣り上げ、新聞に掲載されたり、魚拓がキッコーマン醤油の広告に採用されたこともあった。ちょくちょくクルーザーで外洋まで出かけていた叔父が身に付けていた時計は、ROLEXサブマリーナー(Ref.16800)であった。風防にサファイアクリスタルを採用することで300mの防水性能を持たせ、ベゼルと文字盤は黒。ケースとブレスはSSで黒とシルバーのコントラストがなんとも逞しくみえる。まさに「海の男」のための腕時計である。
しかし、横浜という洗練された街では逞しいだけでは通用しない。無骨なだけではなく、どこか優美さも感じられるサブマリーナーはこの街に最も似合う時計ではないかと私は密かに思っている。
OMEGA贔屓な私ですらダイバーズウォッチの性能、デザインにおいてSeamasterではサブマリーナーやシードゥエラーには到底敵わないように感じている。1958年(Ref.5508)にほぼ完成されたまま現在まで継承されているサブマリーナーのデザインは、多くのダイバーズウォッチの指標となった。そしてそれを追い抜いている時計に私はまだ出会っていない。
叔父の息子(父の従弟)も叔父と同じサブマリーナー(Ref.16610)を身に付けている。親子揃って同じシリーズを身に付けているというのもまた面白い。
叔父は寝ているときと風呂に入っているとき以外、どんなときでもサブマリーナーを身に付けている。造園をするときも身に付けているため、時計に傷が絶えず、20年以上使い込まれたブレスは緩々になっている。しかしそのヤレた感じが、またたまらない。どのようなときにも一緒で、あくまで道具として使われる。これが本来の腕時計の姿で、傷を恐れながらチマチマと使っている自分が何とも貧乏っぽく感じられて居た堪れない(OMEGAの時計、すぐ傷つくんだもん)。ROLEXが採用しているSSは316ステンレススチールと呼ばれる傷や腐食に強いものである。普段使いの時計にはベストマッチである。
サブマリーナーやシードゥエラーは腕が細い私はあまり似合わないかもしれないが、恐ろしく腕が太い私の父なら似合うであろう。お金に余裕があるのならば、買って差し上げたい1本なのだが…妙に人気が出てきて、高騰が続いているのである。


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