自動巻きの時計を複数個所持していると、使用する時計のローテーションから二日ばかり外れた時計は止まってしまう(パワーリザーブが48時間前後のものが多いため)。朝、忙しくしている(私は朝方弱い)中で時計の日付や時刻を正しく調整しているような時間は無く、私のような不精にはワインディングマシーンが必須である。
ワインディングマシーンを導入するに当たってよく危惧される事象に、時計が帯磁してしまうということがある。ワインディングマシーンはモーターを使って時計を回転させながら自動巻きのローターをまわすわけだが、そのモーターによって発生する磁気が時計に及び、それが長時間にわたることで金属が磁性を持ってしまう。このような状態を帯磁と呼んでいる。
時計が帯磁するとどのような現象が起こるか?まず時計が進むようになり、日差が大きくなる。日差も一定のまま日々推移するならばそれほど問題ではないのだが、日によってまちまちになるのはちょっと困る。
帯磁してしまった時計は「磁気抜き器」で簡単に消すことが出来る(商品によっては個人で買える価格帯の磁気抜き器もある)。たいした帯磁で無い場合はケースごと磁気抜き器にかけて消磁できるが、ムーブメントを構成するパーツ全体に磁気が及んだ時には、パーツ一つ一つに対して消磁を行う必要がある。つまり、オーバーホールが必要になるということである。
帯磁しているかどうかを厳密に確認するためには「磁気テスター(またはガウスメーター)」という計測器を使うのだが、そのような高尚なものでなくても簡単に磁気を確認できる道具がある。方位磁針(コンパス)である。これを帯磁しているものに近づければ、針はおかしなところを差すはずである。
とりあえず、所持している機械式時計を方位磁針に近づけて帯磁の有無を確認する。ワインディングマシーンには4つの時計をセッティングしているのだが、このうち1つに不穏な動きがあった。TAGHEUER 6000 WH5212である。時計を近づけると、方位磁針の針が微妙に動くのである。4つのうち3つは無事で1つだけが帯磁しているということは、ワインディングマシーンが原因とは考えにくい(元々、私が使い続けてきた時計ではないので、どのタイミングで帯磁したのかは良くわからない)。
ついでにワインディングマシーン自体から磁気が出ていないかどうか確認してみた。非動作中、動作中共にコンパスの針に不穏な動きは見られなかった。これをもってますますワインディングマシーンが帯磁の原因になったとは考えにくい。
WH5212は妙に時間が進むことが気にはなっていた。2週間で2分位進むのである。これは帯磁していることが原因だったのかもしれない。
ワインディングマシーン以外に磁気を発するものが自室に無いか、方位磁針を入手したついでに調べてみた。
まず、当たり前といえば当たり前のスピーカー。防磁型を謳っている製品でも方位磁針に乱れが見られる。しかし、コーン紙部分からちょっと離れるだけで方位磁針は正常に戻った。このあたりは防磁型であるが故だろうか?スピーカーの上に時計を置くのは論外だが、距離をある程度とれば問題ないようである。
携帯電話も磁気を発するということで、時計の近くに置かないようによく言われる。待ち受け状態でも方位磁針の針に揺れが見られたが、通話状態ではそれ以上に針が揺れた。
自室内で最も方位磁針の揺れが大きかったもの、それはパソコンであった。特に電子部品がデスクトップに比べて集積しているノートパソコンのためか、猛烈な針の振れ様であった。距離が20cmくらい離れた位置から方位磁針の異常が見られ、特にハードディスクや工学ドライブの真上では針が張り付いて全く動かないほどであった。仕事がオフィスワーク中心の場合、パソコンに触れないということはほとんど無いと思う。現行発売される機械式時計には何らかの帯磁機構が必要なのではないかと思う。
Rolexのミルガウス復活は、現代のニーズに応えているように思える。他にも耐磁性能が高い時計としてIWCのインヂュニアが挙げられる。また、OMEGAのSpeedmaster、Seamasterの一部には耐磁用のプレートが入っている。最低限、これくらいの装備はして欲しいものだが、シースルーバックの時計では実現できない。シースルーバックは機械式の魅力の一つである。なんとも悩ましい限りである。
磁気抜き器ほしいなぁ…近いうちに買っちゃおうかなぁ。


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