山田宗樹 「嫌われ松子の一生」

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先日、本書が原作となる中谷美紀主演の同名映画を視聴した。松子の流転し続ける運命を実にコミカルかつテンポ良く表現しているのだが、細部まで考えると、人々の行動に何点か疑問が残った。主人公「川尻笙」の彼女「渡辺明日香」は何故急に主人公の前から姿を消したのか?(映画では青年海外協力隊に行くことになっているが、小説では異なる)、「龍洋一」は何故組の暴力団に追われるようになったのか?(組の金を使い込んだことになっているが…具体的ではない)、「龍洋一」は出所後に何のため殺人を犯したのか?…疑問は尽きない。
こうした謎を解くために、原作の小説も読んでみることにした。映画との設定の違いがいくつか見られるが、大筋の流れは同じである。

物語は松子の視点から見た過去の描写、笙の視点から見た現在の描写が繰り返される。初めは離れたところから始まるが、それが次第に交差するようになる。松子の視点から見た事実、そして笙が松子の過去を知るために生前の松子を知る人から聞かれる各人の視点からの事実。お互いの思いに少しの違いがあったために松子は幸せのチャンスを逃している。この描写にはとてももどかしい思いをさせられる。

世の中は理不尽なことであふれている。本書内でも「ちょっとした運命の悪戯」で、松子のような流転の人生を送る可能性は誰にでもあると書かれているが、全くそのとおりだと思う。理不尽であることを恨みながら過去ばかり振り返るのも一つの生き方だが、松子はその反対である。まさにその瞬間瞬間を生きている。それが短絡的な行動を生んでしまう一つの大きな要因であるから手放しに賛同することはできないが、人一倍愛に飢えていた松子にはこうした選択肢を選ばざる得なかったのだろう。
そんな松子に、フィクションながら客観的立場である読者は「そっちに行っちゃダメー」と声をかけながら、客観的には不幸に見える松子の人生を出歯亀根性で覗き見してしまう。そんな心理が本書をいっき読みさせるのだろうか?私はあっという間に読了してしまった。

しかし、最後は辛い。松子の死の核心に笙はたどり着くのだが…それはあまりにもひどい。
私が通勤の際に利用している満員電車。何人乗っているのかはわからないが、その人数だけ固有の歴史が存在している。人を殺すということはその歴史を終わらせることである。どんな人間にもそのような権利は無い。松子の人生を知った後だから、余計に怒りを感じてしまった。

ちなみに、私の祖母の名前は「松子」である。この名前を見た瞬間から、どんな作品なのかと強く興味がひかれてしまった。そんなわけで、私のこの作品への評価にはバイアスがかなりかかっています(笑)。

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