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1997年のバーゼルで発表され、超目玉商品として一躍有名になったこの時計。ついに私の手元に届きました(最近、ZENITH関連ネタがやたらに多かったのはこれの前フリってところです^^;)
フライバック機構を持つエルプリメロを搭載したこのモデル。なんと、定価が38万だった。LVMH傘下の現状からすると、とてもじゃないが考えられない価格設定である。
しかし発表された時期が時期だったために「不遇のクロノグラフ」といっても差し支えないと思う。その辺は後述しましょう。
エルプリメロは先日紹介したとおり、ZENITH社が誇るクロノグラフムーブメントである。1997年当時はRainbow、デルッカ、クラス、クロノマスター等のモデルに搭載されていた。
名前であるRainbowはヨットレース「アメリカズ・カップ」で1934年に優勝したレインボー号が由来である(30分積算計がカラフルだからRainbowなわけではない)。Rainbow Flybackの前進モデルといえるのがRainbowであり、ダイバーズウォッチを志向していたため、ねじ込み式リューズやねじ込み式のクロノボタンが採用され、10気圧を実現している(Rainbow Flybackも10気圧防水を謳っているが、ねじ込み式リューズやクロノボタンは採用されていない)。
海を中心にRainbowは開発されたが、Rainbow Flybackは空を志向したモデルであった(フライバック機構も空港管制官やパイロットの利用を想定)。ZENITHとしては久しぶりのパイロットウォッチであるが、その歴史は古い。ZENITHでは1930年代にフランス空軍用コクピットウォッチの製造を手掛け、60年代にはクロノグラフが空軍関係者に愛用された。60~70年代にはイタリア空軍に正式採用された実績も持っている。
Rainbow Flybackと名前にまでなっているフライバック機構とはどのようなものか、簡単に説明しよう。通常のクロノグラフ計では帰零させるためにはクロノグラフを停止してリセットボタンを押す必要があるのに対し、クロノグラフを停止せずにいきなりリセットボタンを押すことで帰零させ、0からの測定を再開するものである。これにより、ラップタイムの測定などが可能になる。Rainbow Flybackは両方向回転ベゼル(ダイバーズではないので、両方向に回すことが出来る。目盛には分が記載されている)を備えているので、全体としての時間はベゼルを参照し、ラップタイムをクロノグラフで測定する…といったような使い方も可能である。
Rainbow Flybackの開発にはフランス空軍やエールフランスの協力をもとに1995年から開発がはじまった(残念がら、何らかの事情で正式採用はされなかった)。実際にパイロットたちに着用してもらい、テストを繰り返して作り上げられたもので、光を反射しない反射防止コーティングのされたサファイアクリスタル風防をしようしたケースとマット仕上げのブレス、グローブをつけていても操作がしやすい、クロノグラフボタンやリューズ、両回転ベゼルが備えられている。クロノグラフのスタート&ストップ、リセットボタンも非常に押しやすく、押されたことがわかりやすい。コラムホイールを採用するエルプリメロのためだろうか?(現行のクロノマスターはもっと押しにくい感じがあるから、ボタン形状の工夫がその理由だろうか?)
また、珍しいことに本モデルではタキメーターではなくテレメーターがインナーに記載されている(Rainbowではタキメーターであったが)。テレメーターとは音速と光速差により距離を測定するものである。音速と光速の速度差は約0.33km/sであり、1分間であれば20kmの差ができる。例えば雷が落下した位置の測定などに使える。「ピカッ」と光った15秒後に「ゴロゴロ」という音が聞こえたならば、約5km先に雷が落ちたことがわかる。航空や軍事利用においてこれがどのように有用なのかはちょっと良くわからないが、今となっては珍しいものである(オメガのスピードマスタープロフェッショナルではタキメーターのベゼルをテレメーターに変えられると聞いたことがある)。実用性でいえばタキメーターのほうがあるように思えるが、すでにスピードマスターを持っている私には、テレメーターは結構遊べる。早く雷のシーズンにならないかと楽しみにしている。
現行ZENITHのラインナップから比べると、かなり無骨で荒々しい印象のデザインである。このことが前述した「不遇のクロノグラフ」になってしまった一つの理由かもしれない。
1997年のバーゼルフェアでRainbow Flybackが発表されてから2年後、ZENITHはLVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)グループ傘下となった。前述したとおり、LVMHはグループ内におけるZENITHを高級なウォッチブランドと位置づけた(ミドルクラスは同じ1999年にLVMH傘下になったTAG HEUERに担わせる計画で、現実にそのような位置づけとなっている。)。そこで、まずは現行商品の定価見直しが実施された。1999年以降、Rainbow Flybackは48万に価格設定され、さらに最終的には58万まで値上げされた。時計のケースが木製になったりと少しの変更はなされたのだが、時計本体の変更は無かった。
次に行われたのはブランドイメージに沿ったプロダクトの開発。ラグジュアリー路線を前面に押したいLVMHとしては、無骨で荒々しいRainbow Flybackはそれに合わなかったのだろう。市場のニーズはともかく、2003年にディスコンとなった。Rainbowシリーズは後継モデルがリリースされることも無く、ZENITHのラインナップから消えていったのである。
ところが、ちょっと驚いたのが一昨年のDEFY Chrono Aeroの30分積算計のカラーリングである。これはパイロット達が一瞬で積算時間を確認するために導入されたカラーリングである。DEFYは力強くかつ美しいデザインが売りでRainbowシリーズの後継モデルではない。だが、古くからのZENITHオーナーの目を引くには十分な印象であった(残念ながら、フライバック機構は導入されてはいない)。
非常に人気が高いモデルながら、販売されていた期間が腕時計のプロダクトライフサイクルからすると短かったため、市場に中々出回ることが少ないRainbow Flyback。現在でも25~35万程で取引がされている。
今回入手したモデルの状態および使用レビューはまた後日。
Rainbow Flyback(Ref.02.0480.405/24) スペック

- Cal.405(32石)El Primero 構成部品:280個 36,000振動/h(10振動/sec) 自動巻き
- パワーリザーブ50時間以上
- フライバック機能付き
- 駆動系:ピラーホイール、キャリングアーム、スライディングギア
- 4時方向にデイト付き 瞬時送り
- 直径40mm 厚さ11mm 重量140g SSケース
- 3連マット仕上げステンレスブレスレット
- 両面無反射コーティング・サファイアクリスタルガラス風防
- 両方向回転ベゼル
- テレメータスケール
- 100m防水
- トリチウム夜光塗料付きインデックス




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