我ながら、またミーハーな本を買ってしまったものである。
このブログ内で幾度と無く紹介しているちょっと変わった哲学者と、メディアへの露出度が高く、リベラルな女性心理学者との対談である。前回紹介した『「うるさい日本」を哲学する』のような往復書簡ではなく、座談会のような席を設け、その中で二人が交わした意見をそのまま本にしている。
メディア露出度が高い学者というのはあまり好きではないのだが、香山さんの意見(特に、働くということに対する考え方)については、結構、共感を覚えている。
目次を紹介しよう。
- 結婚しなくていい!
やっぱりモテないといけませんか?
結婚すると幸せになれますか? - 就職なんかしなくていい!
何のために働くのですか?
夢がないといけませんか? - 金持ちになんてならなくていい!
格差って本当にありますか?
お金が無くても生きていけますか? - 常識なんてなくてもいい!
今どき知識って必要ですか?
人生の目的って何ですか? - 生きがいなんてなくてもいい!
生きていると面白いことがありますか?
生きがいが無いといけませんか - 生きがいなんて無くてもいい!
人間関係がうまくいくコツはありますか?
人間関係はどうあるべきですか?
もう、目次を見た瞬間から「ポスト・モダニズム的どうでもいい感」がプンプンしてくる。
総じて論じれば、この本は他人と自分とを比較して「何であの人があんなに恵まれているのに、私はこんなに惨めなの?」とか、「こんな私ですけど、生きていてもいいですよね?幸せになれますよね?」という、漂流気味な人がほしい言葉にあふれている。ルサンチマンの塊のような本である。「あなたはあなたでいいのよ」、「そんなに無理する必要は無いのよ」という優しい言葉であふれかえっている。
ここまで読んでいただいた方ならば「なんで中島義道がそんな意見にのっているわけ?あの人は幸福よりも真実を追い求めると宣言した哲学者でしょ?」と思われるのではないだろうか。
実は私も全く同じ意見で、中島先生は香山さんに飲み込まれている感じが否めない。この本における中島先生は、(今までの著作と比べれば)相当普通のおじさんになってしまっている。やはり、中島先生の思いは話し言葉というよりも、書き言葉という手段でしか表現が出来ないんじゃないかなぁと、この本を読んで思った次第である。
ちょっとイイねと思ったのは、働くということに対する考え方。
「やりたいことが何かということをとことん追求し、それを仕事にして自己実現を目指しましょう」
ということを企業も、就職を斡旋する会社も、社会人向けの各種スクールでもガンガン言っているが(そして私も過去にそう言ってきましたが)、実際に「やりたい」と思っていた仕事が確実にやれる保障など無い上に、仕事となると、趣味のレベルとは要求されるレベルが異なる。つまり、「やりたい仕事」に対して過剰に期待してしまうと、「そんなはずは無い」という思いと共にガックリ来て即転職のようなことにもなりえない。完全に嫌いなことを仕事にするのはつらいので、そこそこ好きな仕事を「飯のタネ」と割り切る程度に抑え、仕事に対しては取り組んだほうがいいと本書では提案している。
私も独身の頃は「自分の好きな仕事へ~好きな仕事へ~もっと自分の適性に合った仕事があるんじゃないか?」と思いながら、結構会社を移ってきた。飯を食えなくなって困るのは自分だけだし気楽に考えてきたのだが、結婚して子供が出来たりするとそうもいかない。幸い今の仕事がそこそこは好きだし、報酬もそんなに不満は無い。なので、私はこの会社に在籍し続け、本当にしたいことは自分の仕事以外の時間の中でするように、ここ最近は生活を変えてきた。会社に長時間いたり、仕事の延長で拘束されたりするのがたまらなく嫌なので、定時になるとあっという間に消えるのだが、私はそういう人として周囲に認識されている。そうなるとこれまた本当に気楽である。とは言え、定時内でクビにならない程度の仕事はもちろんしなくてはならないが。
その他の内容は、全体的に説教じみていてあまり面白い内容でもない。
立場が異なる人であれば「うんうん」と思えるのかもしれないが、私にとって『生きているだけでなぜ悪い?』という問いへの回答の片鱗すらも、本書から得ることは出来なかった。タイトルを変えるべきなのではないか?



コメントする