
「あんたBREITLING持ちで、しかもそのモデルかよ!」
という声が聞こえそうであるが、持っているのである。昔の記事に「買わない」とかいいながらも実は所持している。気の迷いか?いい意味でも悪い意味でも話題になっているものは気になってしまうものである。
2004年にChronomat"Evolution"として、直径、厚さを(デカ厚ブームのはしりの時期でしたから)前モデルから拡張し、クロノグラフプッシュボタンをねじ込みロック化した。おかげで300mという高い防水性能を得ることに成功した。とはいえど、Chronomatはダイバーズウォッチではない。NavitimerやMontbrillantほど主張はしていないが、元々航空機を強く意識したクロノグラフである。
まずはこの時計のスペックを紹介する。
- インデックス:ブラック/シルバー
- ムーブメント:Cal.breitling13 (ETA Cal.7750ベース 8振動 25石)
自動巻き Chronometer - パワーリザーブ:42時間
- 防水性能:30気圧防水
- 風防:ドーム型サファイアクリスタル(両面無反射コーティング)
- ねじ込み式リューズ
- ねじ込みロック式セキュリテイープッシュボタン
- ラチェット式逆回転防止ベゼル
- 素材:ステンレススティール
- 外寸:直径43.7x厚17.1mm
- 重量:約210g
- 価格:¥640,500(2009/03/20現在)
「ETAムーブでこの値段はあり得ないんじゃないのか?」とおっしゃる方、わかります。私もはっきり言ってそうだと思っていた。
この時計(っていうか、最近のBREITLINGの時計すべて)において、あまりムーブメント側を見てはいけない。とにかく外装を見てほしい。その造形に対してなら、この価格は許されるのではないかと私は思うのである。全体的にポリッシュがかかっているためにその輝きはちょっと目立ちすぎて恥ずかしすぎるくらいなのだが、まずそこに過大な抵抗感を抱かないのであればこの先も読み進めてほしい。

リューズ周りを拡大した。リューズはオニオン型の古典的な形状である。ねじ込み式でこの形、私自身は使いづらいと思っている。ねじ込みにくいのである。リューズガードがねじ込みにくさを助長しているような感じもある。
ベゼルは逆回転防止。航空時計ならば両回転でも良い気がする(NavitimerやMontbrillantは両回転)。"15"の表記の横にネジがある。このネジを外すことにより15のタブ(ライダータブ)をとることができる。反対側にある"45"のタブも取れるため、交換することによって「残存時間記録」、「経過時間記録」の双方の用途に使用できる。だが、ネジを緩めるというのはなかなか面倒である。どちらか自分が使いやすいシチュエーションに合わせてタブをセッティングすればよいだろう。

クロノグラフのボタンはねじ込みロック式を採用している。誤って水中で作動させてしまう心配は無くなる(この機構が無いクロノグラフは、防水性能が高いというスペックになっていてもどうしても心配してしまう)。しかし、このロックが付いていると、ふだんからあまり使わないクロノグラフ機能がますます使われないことになる(笑)。無駄にオーバーホール料金だけ高い時計になってしまうな、これでは...。防水という意味でベストなのはIWCのアクアタイマーのような「水中での動作も可能なクロノグラフ」であるが、このモデルは素材が18KYGや18KRGもラインナップされているため、技術的に難しいのではないかと私は考えている。まぁ、航空時計ですから、そのあたりはあまり深く考えることも無いだろう。

文字盤の外周には2つのメーター記載がある。1つは平均時速や生産効率の計算に使える、よく見かけるタキメーターである。もう1つは1分間を100分割した場合の10進法表記である。「0.22分」などと言われても、ここを見れば「ああ、だいたい12秒ね」ということがわかる。このような表記のある時計を持つのは初めてである。さらに、これら表記はかなり小さいにも関わらず(黒文字盤のせいか?)かなり視認性が良い。他のクロノグラフでは目を凝らさないと見えない(私は老眼ではありません)数字も簡単に読み取れる。一見「ゴチャゴチャして何だかわからねぇ」風のNavitimerのような複雑な文字盤で培った技術が生かされているのか、とにかく全体的に目盛りの視認性がとてもよいのである。

文字盤中心付近である。現行のBREITLING製品はすべてChronometer規格をクリアしている。BREITLINGのロゴ、インデックスはアプライドであり、文字盤の内側と外側、3つのインダイヤルには同心円状にギョーシェ彫りがされている。インダイヤルの外周をシルバーで縁取り、大きめのセリフ系フォントで記載しているこのデザインは実に見事だと思う。
クロノグラフ針の後方はBREITLINGのロゴの一部と同形状。いいデザインの針だと思う。時針と分針は幅が同じ。1時間に1度、レギュレーターモデルのように見える(笑)。
デイトは残念ながらクイックチェンジ機構などは搭載されず、通常のETA 7750同様にだらだらと時間をかけながら日付が変わる。この価格ならクイックチェンジ機構あっても良さそうなものなのだが...。

これは夜光である。Chronomatの夜光はかなり強い。ルミナスポイント、クロノグラフ針の先端にも夜光塗料が塗られているため、暗い所で双方を使うことも可能である。バーインデックス文字盤ならば十分に夜間でも時刻を把握することが可能である。これがアラビア・ローマンインデックスモデルの場合どのようになるのかはわからない。実用最優先ならばバーインデックスがベストではないかと思う。

ケースバックはスクリューロック式。しかも、通常のオープナーの爪をかける位置が見当たらない。BREITLING社は「これを傷つけずに開けられる機械はBREITLINGにしかない」ようなことを言っていたが、意外とゴムボールを圧着回転させることで開いたりするんじゃないかと思っている。そうでないと、他の時計屋ががオーバーホールすることは不可能である。まぁ、不可能にさせるためにこんな形状にしたのだろうが。ROLEXよりたちが悪いなぁ、これは。ちなみに、ここまでポリッシュ仕上げ。汚れると目立つ。

このChronomat最大のウリはこのブレスなのではないかと私は考えている。一つ一つのコマが斜めになっているこのブレスは予想以上に可動範囲が広く、腕にフィットする。吸いつくような感じである。TISSOT T-LORD VALJOUXやZENITH Rainbow Flybackのレビューで装着感のよさをアピールしたが、それを超えている。スペックに記載したが、この時計は210g近くある。それなのに変に位置がずれることもなく腕にフィットする。同じような重さの時計というと、LONGINES HydroConquest Studs Bezelがあるが、これは特にブレスの作りが雑で荒くてなかなかすごい(笑)。本当にずっしりときて苦行のように思えるときもあるのだが、CHRONOMATではそのようなつらさを感じたことはほとんどない。まぁ、HydroConquestの倍以上の値段なのだからそれくらいはしっかりしてもらわないと...。

バックルはダブルロック式。ダイバーズウォッチではないので、ダイビングスーツ用エクステンションなどは装備されていない。このバックルも見事にポリッシュ。ギラギラである。バックルはどうしても傷がつきやすいので、ポリッシュの方が傷消ししやすく、便利である。

この斜め5連コマの調整はネジにて行う。というか、ネジ以外の方式でこのブレスのコマを変えるのは困難を極めるだろう。ネジでもちょっと面倒。まぁ、そう頻繁にする作業ではないので特に気にすることもないのだが。細かい位置調節はバックル内のバネ棒を使って行うことが可能である。
さて、初めての私的点数評価。こんな具合である。
- デザイン 16pt
まずポリッシュ仕上げが気に入るかどうかで大きく分かれそうだが...私はそんなに嫌いではない。時計自体が大型化することにより、さまざまな造形的工夫を凝らせるようになってきた。まさにそれが生かされたデザインだと思う。ステンレススチール製ケースとして見ると、仕上げの良さはかなり高いレベルにあると思う。 - ムーブメント 7pt
クロノメーター規格をパスしているとはいえ、ETA 7750ベース。カム式のあまり感触のよくないクロノグラフのボタン...自動巻きローター片巻きだけ。パワーリザーブも42時間のまま。さらに言えば、パイロットウォッチを標榜するならば、フライバック機構くらい普通につけてくれてもよかったのではないかと思う(シャドウフライバックみたいなモデルはもう出ないのか?)。それから、完全自社製ムーブメントのような言い方はやめてもらいたい。これはすべてのBREITLINGモデルに言える。 - 機能 13pt
クロノグラフにこの防水性、逆回転防止ベゼル...と、大抵のものはそろっているが、やっぱり個人的にはクロノグラフにもうひと工夫ほしかった。スプリットセコンドでもよかったのだが(って、いくらになるんだ...そんなの)。 - 視認性 14pt
これは文句なし。特にこの文字盤の場合、昼でも夜でもよく時間がわかる。 - 装着感 14pt
クロノグラフモデルでいえば、私が知る限りこれが最高の装着感と言っていい。ラグの仕上げやブレスの密着感、感触、他のモデルに全く引けを取らない。 - 価格 10pt
いいところもたくさんあることは認めよう。しかし、とても安いとは言えない。だが、カタログだけを眺めている時より実際に所持した後の方が高くは(多少)高くは感じなくなった。所持前なら4pt位にしたんじゃないかな?
というわけで、合計は74pt。ちょっと辛口だったか?

BREITLING好きな方は「カチン」と来るかもしれないが、この時計を一言で表すならば「壮大なるガワ時計」に尽きる。
しかし、時計を好きな人が必ずしもムーブメントのことを知る必要性も実はそんなにないし、装着感が良くてデザインが気に入って、時刻が正確にわかる。ちょっと時間を計測するような機構が2つもある。それで収集家でもない人には十分なのかもしれない。ROLEXのデイトナを除くスポーツモデルと競合する価格帯だが、楽しめる度だけをとるならばこちらに軍配が上がるかも。
それから、本当にこの時計は使ってみるまで装着感あたりの良さは判りにくい。「購入」へ、背中をポンと押して欲しいのであれば、時計店で試着させてもらうとよいと思う。