私の地元である福島では、葬儀の前に火葬される。つまり、亡骸を一目見たいと思うような方は通夜に来てもらわなくてはならない。首都圏の葬儀に二度ほど出席したことがあるのだが、そのときには祭壇に棺が置かれたままだったので驚いた。どうしてこのような順序の違いがあるのだろうか。不思議である。
朝起きたとき、父は既に居なかった。今回の葬儀で割り振られた仕事の中で、父と私が恐らく一番大変なものだと思う。父はお坊さんの送迎である。頻繁に寺から火葬場・斎場へ移動しなくてはならず、また車に同乗している以上、何かを話さなくてはならない。その辺も敬遠しがちな理由であろう。しかし、何故にこの仕事が父の担当になったのだろうか?68歳という年齢である。私は喪主の息子がしてもいい仕事だと思うのだが。
9:30に斎場へ来てくれと言われたが、時間はギリギリ。私の車に同乗した母が悲鳴をあげるようなスピードで斎場へ向う。が、別にそんなに急ぐ必要もなかったらしい。火葬場への移動までにはかなりの時間があった。
火葬場に着いて焼香。そして火葬にかけられる。その間約2時間。昼食をとりながら待つ。通夜にも来てくれた、父の妹とその旦那様と色々話をする。どうも母方の親戚というのは、誰なのかがわからず話もしづらいのである。お坊さんを送って父が帰ってきた。が!昼飯が全然ない。余っていたはずなのに...母が1つだけ残しておいてくれたものの、あまったものはおばさんたちがラップに包んで分けてしまった後らしい。これには父も随分と堪えていたらしく、
「何で俺がこんなことをしなくてはならないんだ?」
と、俺と同じような言葉をこぼしていた。
祖父の骨を骨壷に入れ、また斎場へ。斎場へ戻る際、来た道と同じ道は通らない方がいいらしい(母の豆知識)。ルートを変えて斎場へと戻る。
斎場に戻り、会計の部屋に入ると、昨日の2人が話をしていた。私が来ると、その話もピタッと止んだ。
既に葬儀に参列される方が来ていた。香典も来ている。結局、私の代わりになる人は用意されていなかったようである。誰にでも引き継げるように指示書まで残したのだが...。きっと、今日の葬儀も焼香の時くらいしか中に入れないだろう。意思を母ではなく、喪主に直接伝えるべきだったのかも知れない。葬儀だけあって、300を越える参列者があった。年配の方の香典だと、達筆すぎたり読み方がわからなかったりするので入力も少し遅れてしまう。
昨日と同様に「まだご焼香を済ませていない方は...」という放送を聴いて、急いで葬儀会場へ向う。で焼香。また15秒か。
さすがに昨日よりは時間がかかったものの、データの入力は完了。札束の枚数から金額を瞬時に出せるようにしていたが、どうも違いがある。今日は2つあり、私の入力ミスが1つ、札束の枚数数え間違いミスが1つ。どちらも比較的早く発見できた。その頃には、もう葬儀は終わって会食の時間になっていた。2人には食事に行ってもらい、紙幣の枚数確認を自分の手でも行う。データとしっかり合致。データをCD-Rに追記し、香典袋を整理し、札束を封筒に入れ、チャック付きのかばんにまとめる。終わった...ようやく仕事が終わった。
食事の席に戻ると、父方の叔母と叔父ら夫婦が帰るところだった。叔父とは話したかったんだけどなぁ。久しぶりだったし。
で、イライラしたのが食欲に出てきたのか、寿司5人前を一人で食べてしまった。
また母の実家で二次会を行う。
喪主の母方の叔父は、ウィスキーならば"Canadian Club"が好きらしく飲んでいたが、私はあの酒をソーダ水などで割らないとどうも飲むことができない。なので、斎場近くの酒店で"NIKKA From the Barrel"を購入。アルコール度数51.5度。名前のとおり樽から出してアルコールの度数調整をしていない。しかし、モルトウィスキーではなく、ブレンデッドである。これを自分と父の飲用として買っていったが、二次会に来たほかの方々から「うまい」との評価をもらい、あっという間に無くなった(笑)。今日もそこそこで引き上げ、私の実家に帰ると、妹が戻ってきていた。
父、妹、私の3人で"The Blend of Nikka blend Selection"を飲みながら色々と話す。まぁ、何だか色々と大変だったが、しみじみ「終わったなぁ」と思った。仕事の達成感はあったが、私には葬儀に出たという実感が全く持てなかった。15秒で焼香しただけでそう思えないのは当たり前であろう。心にぽっかりと開いた穴をおいしい酒が癒してくれているような気分になった。
話は尽きず、翌朝の4:00まで飲み続けていた。