バイオリニストであるこのアーティストが演奏する曲はジャンル分けが非常に難しい。クラシックのようであったり、ジャズのようであったり、童謡のようであったり…こうした方のために「イージーリスニング」というジャンルが存在しているのかもしれない。
川井郁子というバイオリニスト・作曲家はちょっと普通じゃない。大阪芸術大学芸術学部教授という肩書きを持ち、駆るバイオリンは大阪芸術大学所蔵の1715年製「アントニオ・ストラディヴァリウス」である。この数千万円の名機を操り演奏される曲は時に激しく情熱的であったり、時に静かで穏やかであったりと実に多様である。同じ人間がこれだけの多様性を持てるということに驚きを隠せない。
彼女の魅力はそれだけではないのである。とても美しいのである。もうここまで演奏が見事で、こんな容姿ってのは反則である(笑)
このアルバム「The Violin Muse」は彼女初のベストアルバムである。私が入手したのは初回限定DVD付きであった。このDVDでは「花音」と「ザ・ヴァイオリン・ミューズ」の2曲を演奏する川井郁子の姿を見ることができるのだが、私はこれでいきなりノックアウトされてしまった。ハープにあわせて優雅でゆったりとした「花音」を演奏する彼女の穏やかな姿に見とれていると、次の曲「ザ・ヴァイオリン・ミューズ」でその情感に圧倒される。静と動の、音と演奏する者の美しさが見事なまでに表現されている。いやぁ、久しぶりに音楽で感動させられた。絶対に初回限定版を入手すべきと断言できる。
もちろんCDの内容も私の期待を裏切らなかった。最も印象に残ったのは、彼女の代表曲とも言っていい「Red Violin Based On En Aranjuez Cou Tu Amor(恋のアランフェス"レッド・ヴァイオリン")」である。フラメンコギターと共に演奏されるバイオリンの巧みさには完全にやられてしまった。
音楽には感情が必須であるということを改めて考えさせられた。そして、その感情を引き出すのには、それなりの道具も必要なんですねぇ。
